北極点まで約1,300km。ノルウェー・スバールバル諸島の山の中に、「人類最後の保険」と呼ばれる施設があります。スバールバル世界種子貯蔵庫——世界中の作物の種、140万サンプル以上が眠る「種の箱舟」です。
▼ どんな施設?
・2008年開設。山を約100mくり抜いたトンネルの奥に、冷却装置でマイナス18°Cに保たれた貯蔵室があります
・万一停電しても、周囲の岩盤と永久凍土が氷点下を長期間維持し、0°Cまで温まるのに約200年かかる設計です
・収容能力は450万サンプル(1サンプル平均約500粒)。2026年6月時点で140万サンプル超・134機関から預託されており、種子は世界のほぼすべての国に由来します
・世界に約1,700あるシードバンク(遺伝子バンク)の「バックアップのバックアップ」という位置づけで、ノルウェー政府・国際NGOクロップトラスト・北欧遺伝資源センターが共同運営しています
▼ ルール
・「ブラックボックス方式」——箱を開けられるのも、引き出せるのも、預けた国や機関だけ。所有権は預けた側にあり、保管は無料です
・扉が開く(種子を受け入れる)のは年に数回だけです
▼ 実際に「保険」が使われた日
・2015年、シリア内戦により、アレッポにあった国際機関ICARDAの種子バンクが使えなくなり、史上初めて種子が引き出されました(初回は約3万8千サンプル)
・種子はモロッコとレバノンで再増殖され、2017年から貯蔵庫へ「返却」されました。引き出しの実績は現在もこの1件だけです
▼ 皮肉な事件
・2017年、記録的な高温と大雨で入口トンネルに水が浸入(種子は無事)。「温暖化から種を守る施設が、温暖化に襲われた」と世界で報じられ、ノルウェー政府は約1億クローネをかけてトンネルを改修しました
▼ 日本との関わり
・2014年、岡山大学資源植物科学研究所のオオムギが日本から初めて預託されました(累計5,000系統超)
▼ 小ネタ
・入口の上部には光ファイバーのアート「Perpetual Repercussion」があり、極夜に光ります
・標高約130mにあるため、地球の氷がすべて溶けて海面が上昇しても水没しない立地です
・スバールバルはホッキョクグマの生息地で、町の外れには有名な「ホッキョクグマ注意」標識があります
▼ 出典
Crop Trust(2026年6月17日・140万サンプル到達発表)、NordGen FAQ、seedvault.no(ICARDA引き出し・返却記録)、ノルウェー政府発表(改修予算)、岡山大学発表、Wikipedia ほか(2026年9月時点)
▼ クレジット
音声: VOICEVOX:波音リツ
地図: NASA Worldview (Blue Marble) / 断面図はイメージです
▼ 画像クレジット (Wikimedia Commons)
・Entrance to the Seed Vault / Subiet (CC BY-SA 4.0)
・Svalbard Global Seed Vault / Mari Tefre (Attribution)
・Inside the vault / Dag Endresen (CC BY 3.0)
・Aluminium bags for seed storage / Dag Endresen (Public domain)
・Longyearbyen colourful homes / Peter Vermeij (Attribution)
・Raudfjordbreen glacier / AWeith (CC BY-SA 4.0)
・Aurora over Svalbard / Martyn Smith (CC BY 2.0)
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