2023年3月19日、日曜日。スイス二大銀行の一角、クレディ・スイスが、同じスイスのUBSに総額30億スイスフランで買収されることが決まった。信用不安の表面化から、わずか一週間の出来事である。1856年にAlfred Escherが鉄道資金を自国で賄うために設立し、167年にわたり国際金融の名門でありつづけた銀行は、なぜこれほど速く消えたのか──。
Greensill関連ファンドの凍結とArchegosの約55億ドルの損失、資金洗浄を巡る一審有罪(2024年11月に上級審で破棄・無罪と報じられた)、財務報告の「重大な弱点」開示、そして米SVB破綻の波及と、筆頭株主サウジ・ナショナル・バンク会長の「絶対にない」発言。当局が資本・流動性要件の充足を確認した後もなお株価とCDSは悪化し、SNS時代の取り付けが加速した。#020 リーマン・ブラザーズ編に続く「金融崩壊の系譜」を、承認済みファクトシートのみを情報源に、落ち着いて解剖します。
【目次】
0:05 プロローグ ─ 一週間で決められた、名門の命運
0:52 第一章 出発と絶頂 ─ 鉄道とともに生まれ、国際金融の名門へ
1:49 第二章 転機 ─ 綻びが、立て続けに表面化する
3:43 第三章 結末 ─ 決算、SVB、そして一週間の攻防
6:53 第四章 解剖 ─ なぜ一週間で消えたのか(3要因)
8:36 終章 エピローグ ─ その後の後日談
10:02 締め
【関連動画】
金融崩壊の系譜:
・#020 リーマン・ブラザーズ編
・(いずれお送りする)SVB編
【注記(事実の扱い)】
・AT1債(その他Tier1資本証券)約160億スイスフランの全額減記は、2025年10月にスイス連邦行政裁判所が「違法」と部分判断したと報じられ、FINMA・UBSが連邦最高裁に上訴中とされます。係争の存在は事実として述べ、減記の当否には立ち入りません。
・2022年6月の資金洗浄を巡る一審有罪判決は、2024年11月に上級審で破棄され無罪となったと報じられています。
・Ulrich Körner氏・Axel Lehmann氏・Ammar Al Khudairy氏はいずれも存命とされ、内心・動機の断定は避け、発言は日付とともに引用元へ帰属しています(「〜とされる」)。
・UBS・サウジ・ナショナル・バンク・FINMA・スイス国立銀行はいずれも現存企業・機関です。批判は当時のクレディ・スイス経営の意思決定に限定し、買収の是非や現在のUBSへの評価には踏み込んでいません。
・本件は倒産・清算ではなく「救済買収」であり、預金者・取引は継続しています。2022年10月の資金流出の発端となったSNS上の憶測は、事実に基づかないものだったと報じられています。
・金額(総資産 約5,314億スイスフラン/買収額 約30億スイスフラン/AT1債 約160億スイスフラン/Q4資金流出 約1,105億スイスフラン/Archegos関連 約55億ドル/SNB流動性 1,000億スイスフラン超/連邦保証 最大90億スイスフラン 等)は、FINMA・SNB・UBSの公表および報道ベースの概算です。スイスフラン・ドルの原典表記のまま(円換算していません)。
【参考書籍】
・Duncan Mavin『Meltdown: Scandal, Sleaze and the Collapse of Credit Suisse』
・Duncan Mavin『Pyramid of Lies: Lex Greensill and the Billion-Dollar Scandal』
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